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2016.07.14建物を建てる、あるいは購入して賃貸する

相続対策セミナーなどで、手持ちの空き地にアパートや貸しビルを建てることを勧められますが、その理由は次のとおりです。

空き地は更地価額で評価することになりますが、アパートや貸ビルの敷地など貸家権の目的となっている敷地の用に供されている宅地は、貸家建付地として更地価額から評価減されます。

また、建物についても、貸家として借家権が控除されますので、空き地の状態で保有する場合と比較して

有効な相続税対策となります。

 

アパートや貸ビルの敷地など貸家権の目的となっている敷地の用に供されている宅地を貸家建付地といいますが、その土地評価が減少するのは以下のような考え方に基づいています。

建物の賃貸借があった場合、借家人には建物の賃借権にもとづいて、その敷地に対しても支配権が生ずることとなるため、地主はその分、所有権に制約を受けることとなります。このため、アパートや貸ビルなど貸家の目的に供されている土地については、「貸家建付地」として、土地の自用地としての価額から土地に対する借家人の権利相当額を控除して評価することとされています。

 

算式で示すと

貸家建付地の評価額=自用地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

(設 例)

土地(自用地)の評価額  6,000万円

借地権割合       60%

借家権割合       30%

賃貸割合       100%

〈計 算〉

(自用地の評価額)(借地権割合)(借家権割合)(賃貸割合)(貸家建付地の評価額)

6,000万円 ×(1- 60%× 30% ×100% )= 4,920万円

 

つまり、借地権割合が60%、借家権割合が30%とされる地域においてその貸家の全部を貸付けている場合、貸家建付地の評価額は、自用地としての価額から18%評価減されたことになります。

 

 

また、アパートや貸ビルなどの借家権の目的となっている建物については、貸家として自用家屋の評価額から借家権相当額が控除されることは、すでに説明済みですが算式で示すと

 

貸家の評価額=自用家屋の評価額(固定資産税評価額×1.0)×(1-借家権割合)

(注)借家権割合は30%とされています。

〔設定〕

家屋(自用)の評価額(固定資産税評価額)  3,000万円

借家権割合                 30%

 

(自用家屋の評価額) (借家権割合)  (貸家の評価額)

3,000万円   × (1 -30%) = 2,100万円

 

 

 

貸宅地等の小規模宅地の評価の特例

 

アパートや貸ビルなど貸家権の目的となっている敷地の用に供されている宅地の価額は、貸家建付地として評価されますが、相続の開始の日が平成27年1月1日以後の場合の相続税の取扱いにおいては建設したアパートや貸ビルなどで相当の対価を得て継続して貸し付けられているものである場合には、貸付事業用宅地等として小規模宅地の評価の特例が適用され、その敷地のうち200㎡までの部分については、貸家建付地としての評価額から、さらに50%評価減されることになっています。

 

なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできませんので注意が必要です。

 

仮に、被相続人等の居住用に供されていた宅地等が100㎡とし、他に貸付事業用宅地として借地権割合60%・借家権割合30%・賃貸割合100%である相続税評価額8,000万円の土地(200 ㎡)を有しているとします。

 

この場合、小規模宅地の評価の特例が適用される面積に限度があり、貸付事業用宅地については以下に示すように139㎡までの面積について50%の評価が減少することになります。

 

居住用宅地 100㎡×(200/330) + 貸付事業用宅地 139㎡ ≦ 200

従って、貸付事業用宅地の内で評価減が適用された部分の土地評価は

(貸家建付地の評価額) (小規模宅地の評価割合)(小規模宅地の評価減割合)

(8000万円×139/200 ×(1-60%×30%×100%))×(1-50%) = 2279.6万円

 

以上より、貸付事業用宅地の評価額は、2279.6 + 8000×(200-139)/200 = 4719.6万円

と算定され、自用地としての評価額から約41%評価減されることになります。

また、居住用宅地 100㎡の評価については80%減額されます。

なお、これらの評価減の特例を受けるためには、相続税申告期限内に申告することが原則ですので、円満に笑顔で相続手続きができる準備の大切さをご理解いただきたいと思います。

 

(注)貸宅地等の小規模宅地の評価の特例を受ける要件

事業承継要件 その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、

かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること。

保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。

 

特定居住用宅地等の要件

取 得 者 取得者等ごとの要件
被相続人の配偶者 「取得者ごとの要件」はありません。
被相続人と同居していた親族 相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、

かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人

被相続人と同居していない親族 ①から③の全てに該当する場合で、かつ、次の④及び⑤の要件を満たす人

①相続開始の時において、被相続人若しくは相続人が日本国内に住所を有していること、又は、相続人が日本国内に住所を有しない場合で日本国籍を有していること

②被相続人に配偶者がいないこと

③被相続人に、相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと

④相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと

⑤その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

(注)

  • 上表に示す親族には、法定相続人及び遺贈を受ける親族を含む
  • 上表の③で示される「家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと」の意味は、次のように言葉を補って読むことができる。

「家屋に居住していた親族で、その親族がその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)ではないこと」

 

 

また、アパートや貸ビルを建設する場合には、土地の評価の問題の他に、建設資金の捻出、賃貸収入が生ずることによる税金(所得税等)、その収入の使途等諸々の問題が生じますのでその他のことも十分考慮することが重要です。